こんにちは。プロダクトマネージャー(PdM)の廣田です。
今回は、サービスが急成長する「1→10フェーズ」で直面した、業務オペレーションの複雑化にPdMとしてどう立ち向かったか、私たちの経験をお話しします。
成長痛としてのオペレーション複雑化
サービスがユーザーから市場に受け入れられ、急成長する1→10フェーズ。この時期は、機能の追加、組織の拡大、そして顧客層の多様化が同時に進行するため、オペレーションは急激に複雑になります。
- 機能の追加: ユーザーの要望に応えるたびに、新しい機能が追加され、関連するオペレーションも複雑に。
- 組織の拡大: 少人数で密に連携していたチームが急拡大し、情報共有や連携のプロセスが複雑に。
- 顧客層の多様化: 顧客のニーズが多様化し、セグメントごとに異なるサポートや対応が必要に。
こうした「成長痛」に伴って、多くの企業でもオペレーションの効率低下やミスの増加といったことが起きているのではないでしょうか。
Assuredで起きていたこと
私たちのプロダクトである「Assuredクラウド評価」でも、多くの企業様に導入が進むにつれて、ユーザー企業様から送られてくるセキュリティ調査依頼のオペレーションが複雑化してきていました。
※Assuredは、SaaSや企業といった取引先のセキュリティ対策状況を専門家の目で客観的に評価し、その評価情報をデータベース化するプラットフォームを構築しています。その過程で、本記事でお伝えするようなセキュリティ調査のオペレーションを実施しています。
フローとしては、1.調査依頼の内容の精査、2.回答依頼先の特定、3.回答依頼の送付、4.回答進捗の管理があり、そのフロー自体はシンプルなものの、依頼の内容や回答依頼先の企業様によってオペレーションの条件分岐が多岐にわたり、人によっては長大なマニュアルを毎回確認しなければ実施困難な状況に陥っていました。

やったこと - 複雑化の根本原因を断つ、プロダクトの力
この状況を目の当たりにし、PdMとして「これはプロダクトの力で解決すべき、そして今後、複雑化させない仕組みを作るべきだ」と強く感じました。私たちが目指したのは、単なる工数削減ではなく、業務が複雑化する負の力学そのものを断ち切ることでした。
具体的には、以下の3つに取り組みました。
1. 理想のフローと例外を分ける
まず、あるべき理想の業務フローを定義しました。それは、依頼が来たら自動で回答が完了する、シンプルで一本道のプロセスです。
しかし、現実はそう簡単ではありません。依頼には様々な条件分岐があるため、私たちはすべての依頼を「理想のフロー」と、手間のかかる「例外フロー」に分類しました。そして、この例外を「短期で削除もしくはシステム化できるもの」と「当面は手動で対応が必要なもの」に分けました。これで、何から手をつけるべきか明確になりました。
2. MVPで自動化の第一歩を踏み出す
理想を一度に実現することはできません。そこで私たちは、すぐにシステム化できる例外と、シンプルな依頼を自動化するMVP(Minimum Viable Product)を開発しました。
これによって、複雑な分岐がない依頼は自動で処理されるようになりました。さらに重要なのは、手動対応が必要な依頼もシステムが自動で「これは例外です」と判別してくれるようになったことです。これにより、オペレーションチームは、ただ手作業に追われるのではなく、システムが指示した例外的な作業に、集中して取り組めるようになりました。
3. オペレーションの力学を変える指標化
この取り組みを一時的なものにせず、持続的な改善につなげるため、オペレーションチームに新たなモニタリング指標を追加しました。
- 自動化比率: 全体の依頼のうち、システムで自動化できた割合
- 自動化条件の達成率: 自動化のための条件ごとの達成率(すべての条件達成で依頼が自動化)
これによりオペレーションチームの体制として、依頼をこなすだけでなく、自ら課題を設定し、自動化比率を向上させるための施策を考案するとともに、指標が悪化するような例外オペレーションの追加にも敏感に対応できる仕組みを整えることができました。

まとめ・成果
様々な施策を通した結果として、以下のような成果につながりました。
- 工数削減: 一部の調査依頼が自動化され、オペレーションチームの負担が軽減された。
- 自律的な改善: オペレーションチームが、自ら自動化比率を改善するためのアイデアを積極的に生み出すようになった。
- 例外を忌避する文化: オペレーションチームに「例外が増えると自動化比率が悪化する」という共通認識が生まれ、業務プロセスのシンプルさを維持しようという意識が浸透した。
今回の私たちの課題設定は、「今以上のカオス化(複雑化)の阻止」と、「オペレーションの簡素化への力学の醸成」でした。そのためには、「簡素化へのメリットを作ること(自動化による工数低減)」と「より良いオペレーションにおける新たな観点をチームに付与すること」と考えて施策を作りました。
すべての分岐をシステム化させるには莫大なリソースを必要としますが、1→10のフェーズにおいて、開発リソースは有限で希少です。今回の施策は、組織への影響に狙いを定め、プロダクトの今後の成長に対してのステップになるような、良い塩梅のプロダクト作りが実施できたと考えています。
ご参考になれば幸いです。